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初期研修医 修了(令和二年度)
旭川医科大学卒業 / 茨城県出身
茨城の出身だけあって、田舎の病院であることも、周囲に商業施設がないことも、佐藤には想定内だった。だが一つ、大きな想定外があった。それは「症例がここまで全力でぶつかってくるなんて」という驚き。
「地域柄か、重症化して、いよいよどうにもならなくなってから病院へ行くという患者さんが多いんです。運び込まれた時点で、どうなってしまうんだろう、何が起きるかわからない、というケースも珍しくありません。だから我々初期研修医も全力で身構え、全力で闘うしかないんです」
それが本当の勉強になる。ほんものの力がつく。全力で闘う日々は決して軽いものではないけれど、「でも、苦労は買ってでもしろ、というのは本当ですよ」と佐藤は満足げだ。
もう一つ、想定外だったことがある。それは、「思った以上に見られているという実感」だそうだ。
「入職間もない手術の後、看護師長にすれ違いざま“先生のテープのはがし方、きれいだったよ”と言われたんです。ああ、ちゃんと自分のことを見てくれていたんだ、と嬉しかったですね」
名前までは知らなくても、互いに何となく顔見知り。そんな距離感の人間関係ができる規模の病院だから、初期研修医に対しても常に誰かが目を向けている。何かあったら手を差し伸べようとしている。そうした実感はとても心強く、心地よいものだ。「人間関係の垣根が低いから、私からも質問しやすく、相談しやすいんです」
高校では天文部、大学ではUFO研究会に入っていたという佐藤は「いろんなことに手を出して、どれも長続きしないタイプ」と自己分析する。しかし、医学の道は、どれだけ歩んでも、きっと飽きることはないだろうと感じている。「AI時代だからこそ、データじゃなくて人を見る医師でありたい。その患者さんの生き方にまで踏み込んでいける医師を目指したい」照れくさそうに語るが、その言葉はまさに全力で闘っている人ならではのものだ。